ここは「N.E.S.T.」跡地。
突然現れた怪獣「バイオニクル」と戦う防衛組織の本部基地・・・が、かつてあったはずの場所だ。
地球を守っていたと思われるビオナイクラーが、最強怪獣に敗れるという衝撃の事態は、
双方がN.E.S.T.隊員であったという意外な形で幕を閉じた。
隊員達は、基地の地下研究施設にある緊急避難所に一時滞在していた。
そうそれは、万が一基地が崩壊した時にそなえて作られたシェルターの一種である。
基地は地上部分が崩壊しただけで、幸いにも地下施設はほとんど無傷だったのだ。
ゼロ隊員「おい!一体どういう事だよ!」
ゼロ隊員が勢いよくヨシダ隊員の襟に掴みかかった。
ヨシダ隊員「・・・分からない」
ゼロ隊員「分からないだと!?」
ダーヌ隊員「落ち着いてくださいゼロ隊員、イブ隊長は意識を失っているだけです!」
ゼロ隊員は恋人が傷ついた事に苛立っていたが、ヨシダ隊員が本気で言っている事を理解すると手を離した。
カンタ隊員「まず・・・今の状況を整理しようか?」
イグ隊員「イブ隊長はビオナイクラーだった。ヨシダ隊員はバイオニクルだった・・・
正確には、両方とも体内のカプセルに入っていただけで人間のままだったが」
シグレ隊員「双方のバイオニクルとも泡に還りましたが、中に入っていた二人の命は無事みたいですね」
マトア隊員「わからないのは、何故二人が中に入っていたか、って事ですね・・・」
隊員たちの間を静寂が流れる。
そしてそれは予想外な発言に破られる事となった。
ゼロ隊員「…実は俺、ビオナイクラーなんです」
一同「!?」
ゼロ隊員「振動怪獣ピロカンスを倒したのは、俺なんです」
再び皆が驚愕すると思われたが、そんなことはなかった。
カンタ隊員「実は俺もビオナイクラーだったんだ。暴走したニックージェと戦ったのは俺だったんだよ」
イグ隊員「実は俺もビオナイクラーだ。俺は変形怪獣ゴランドンと戦った。トガメロンV3から脱出できたのは、変身したからなんだ」
ダーヌ隊員「私もビオナイクラーだったの。豪雨怪獣シグソロロと戦ったのは私だわ、変身したからダムの崩壊から助かったの」
シグレ隊員「私もビオナイクラーとして戦った。あの時海生怪獣イグラと戦ったのは私だ」
マトア隊員「僕もビオナイクラーです。ニトロン星人と戦いました」
ヨシダ隊員「・・・俺もビオナイクラーだ。ゼローズとイブ隊員を救ったのは、俺だ」
ニトロ隊員「俺もビオナイクラーwwwNEST創設前に現れたビオナイクラーは俺だったんだよwwww」
全員、衝撃発言をしたはずだったが、それぞれが薄々気づいていたのか納得した表情をしていた。
ゼロ隊員「・・・皆、たまに居ない時があったと思ったらそういう事だったのか!
俺が変身してない時もビオナイクラーが戦ってるからどうもおかしいと思ってたんだ」
イグ隊員「ということは皆、ビオナイクラーの意思と接触したという事だな?」
隊員達はうなずいた。
”私の名はビオナイクラー。マタヌイ星からある使命を帯びてやって来た。
私の使命は、宇宙を飲み込む悪意の塊・大魔王を倒す事。
大魔王はこの地球に何らかの形で潜伏している。そして内部から地球を蝕んでいくはずだ。
だが私は、巨大すぎて地球では活動できない。そこで地球の住人の君にも協力して欲しい。
私と体の一部を共有すれば、人間である君は私と同化し強大な力を得る事が出来る。
大魔王の化身と戦うことも出来るはずだ。
これが私の体の一部、バイオカプセルだ。これを持って念じれば、君は白い巨人に変身する事が出来る”
これが以前、隊員たちの聞いたビオナイクラー自身の言葉であった。
カンタ隊員「実は俺、この接触があったからN.E.S.T.に入ったんだ」
マトア隊員「そうして皆ここへ集まってきたんですね」
イグ隊員「これで、みな言うべき事は言ったな」
全員が隠し事を話し、ついにビオナイクラーの正体が明らかになった。
ダーヌ隊員「・・・次はバイオニクルの事ですね・・・。ヨシダ隊員自身に、何か心当たりは・・・?」
ヨシダ隊員「分からない・・・ただ、突然起こった。記憶が飛んでいる。おそらくそれは、俺が行方不明だった時間のはずだ」
ゼロ隊員「実を言うと、俺も空白の時間があった。
突然変な場所で目が覚めて、違和感があるはずなのに何故か気にできない・・・皆は?」
「俺もだ」
「私も」
「そういえば、いつも誰か欠けてたよね」
そんな声がそれぞれ聞こえた。
ヨシダ隊員が行方不明になっていた=怪獣となっていた、
皆同じように記憶に違和感がある、
そして隊員それぞれ一人ずつに謎の不在の時間があった。
これらの事から隊員たちが出した結論は、
ヨシダ隊員だけでなく、「全隊員がバイオニクルになっていた」というものだった。
つまりそれは、
ニトロン星人 = ニトロ隊員
海生怪獣イグラ = イグ隊員
豪雨怪獣シグソロロ = シグレ隊員
変形怪獣ゴランドン = ダーヌ隊員
生命怪獣マトラス = マトア隊員
振動怪獣ピロカンス = カンタ隊員
変身怪獣ゼローズ = ゼロ隊員
最強怪獣ミグダス = ヨシダ隊員
である事を意味していた。
ヨシダ隊員「なん・・・だと・・・」
ダーヌ隊員「ニトロ隊員がいつの間にかパソコンを手に入れていたのは、そういう事だったんですね」
ゼロ隊員「あの時イグ隊員が肩を押さえていたのは、イグラに刺されたんじゃなくて、自身がイグラでビオナイクラーと戦って傷を負っていたってワケか」
ヨシダ隊員「それで行くとシグレ隊員の首が赤くなってたのは、うどんに絞められたんじゃなくて、シグソロロ自身の巨大な頭で首を痛めていたと言う事か・・・」
イグ隊員「あの危機の時ダーヌ隊員が居なくなっていたのはゴランドンに変身していたからなのか・・・」
シグレ隊員「私も皆も、怪獣から排出されるカプセルから脱出したのに、何故か違和感を感じられなかったんですね」
ニトロ隊員「変身していた間の記憶があやふやになってたwwwとぼけて誤魔化すしかなかったwww」
マトア隊員「これで、僕達はビオナイクラーであると同時に、怪獣でもあったという事が分かりましたね」
カンタ隊員「N.E.S.T.開設のきっかけになった最初のバイオニクルが黒幕の大魔王であると仮定すれば、辻褄は合うな・・・」
ゼロ隊員「わかんないのはさ、何で俺たちがバイオニクルになってたワケ?」
ヨシダ隊員「巨人も怪獣もメンバーなら、原因もメンバーだと考えて良いだろう・・・
これまでで、ビオナイクラーにもバイオニクルにもなっていない者がいる」
イグ隊員「その者は、ビオナイクラーの名をすでに知っており、いつも怪獣に名前をつけて一番最初に呼んでいた張本人」
シグレ隊員「そして、私たちは怪獣になる直前、その者と接触している」
カンタ隊員「つまり・・・」
ゼロ隊員「・・・コゼニ研究員・・・・・・!?」
隊員達は周りを見回した。
コゼニ研究員の姿は無い。
ヨシダ隊員「彼は、今もこの地下施設の中に隠れているはずだ」
イグ隊員「怪獣はカプセルを排出して消えていった。
つまり変身方法はビオナイクラーと同じ、バイオカプセルによるものと言って良いだろう」
マトア隊員「研究員は極秘裏に怪獣化用バイオカプセルを人工的に作っていたと?」
イグ隊員「そういう事になるな。そして今も・・・」
ニトロ隊員「それを俺は飛行機の中で食らって、」
イグ隊員「俺も移動中に変身させられて、」
シグレ隊員「私はダムの崩壊直前に変身させられて、」
ダーヌ隊員「私は呼び出されて変身させられて、」
マトア隊員「僕は電話だと騙されて変身させられて、」
カンタ隊員「俺は貰った菓子が怪獣バイオカプセルにすりかえられてて、」
ゼロ隊員「俺も呼ばれた時に変身させられて、」
ヨシダ隊員「俺は一人で居る時に変身させられ行方不明になっていたわけだな・・・。」
マトア隊員「・・・まだ怪獣になっていないのは、イブ隊長だけですよね?・・・」
ゼロ隊員「イブ隊長が危ない!!」
コゼニ研究員「おおっと、一歩遅かったっすね」
声に皆が振り向くと、コゼニ研究員がイブ隊長のベッドの隣でカプセルを持って立っていた。
ゼロ隊員「お前・・・いつの間に!?」
コゼニ研究員「君達の推測は全部聞かせてもらったっす。全部大当たりっす。さすがはビオナイクラーが認めた人間っす」
ヨシダ隊員「そうか、当たっていたか・・・もう逃がさんぞ?」
コゼニ研究員「・・・おっと、もっと考えてくれれば分かる事があったっすねぇ。
今話しているのはコゼニの意思ではないっす。・・・我等三体の大魔王のものだ」
カンタ隊員「三体の・・・大魔王・・・だと?」
コゼニ「そうだ。我は地球に降りた際、三体に分裂し、三匹の人間に取り憑いた。
だが我等への追跡者であるビオナイクラーを補佐する人間の存在を知った。
そこでその組織の人間の一人・怪生物研究者のコゼニに憑き、
支配して”しもべ”である怪獣を作らせた。
しもべの開発は簡単だった。
なにせ貴様等が集めてくれたビオナイクラーのデータを元に、
バイオカプセルの模倣品・怪獣カプセルを作り、強化発展させるだけだったからな」
シグレ隊員「ならば何故、基地の全員を怪獣にして壊滅させなかったのだ?」
コゼニ「いままでのしもべは、我等の完全体への媒体となる怪獣・パーフェクトモンスターを完成させる為の実験でしかない。
貴様等もビオナイクラーも、しょせん実験材料でしかなかったのだ」
ゼロ隊員「完成なんかさせないぜ!」
コゼニ「我を単なる滑稽な悪役だと思っていないか?
我等の完全体の為の三つのパーフェクト・カプセルは既に完成している」
イグ隊員「!?・・・今すぐ三つのカプセルを確保するんだ!」
コゼニ「さっきも言っただろう?甘く見てもらっては困る。
10分前にパーフェクト・カプセルは我等の取り憑くべき三匹の人間の元に渡っている」
ヨシダ隊員「なん・・・だと・・・」
マトア隊員「ならばその三人の人間を見つければ・・・」
コゼニ「もう遅い!」
コゼニ研究員、いやそれに乗り移った三体の大魔王は、コゼニが手に持っていた黄金のカプセルを自らの体に刺した。
コゼニの体から眩い光が放たれる。
カンタ隊員「ここももう危険だ!」
隊員達はイブ隊員を運び、地上へと逃げ出す。
その後地下施設が吹き飛び、中からバイオニクルが姿を現した。
コゼニが変身した姿、守銭怪獣ゼニゴンである。
ゼニゴン「zzzzzz!」
ゼニゴンは口から十円玉を吐き散らした。
ゼロ隊員「俺たちもビオナイクラーに変身するぞ!」
カンタ隊員「ビオナイクラーは先日の戦いで死んだだろ?」
ヨシダ隊員「確かにイブ隊長が共有していたビオナイクラーは死んだ。
だがそのビオナイクラーは本体の一部から出来た複製のようなものでしかない。
俺達のカプセルにもそれぞれビオナイクラーの複製が入っているはずだ」
イグ隊員「よし、変身だ!」
ゼニゴンの前に、8人のビオナイクラーが姿を現した。
それぞれ武装が若干異なってはいたが、白くマッシブな体系は全員同じだった。
「zzzzzzzzzz!!!」
ゼニゴンが口から大判小判を吐き散らす。
ビオナイクラー達はそれを片手で跳ね除けた。
Bゼロ「そんなもんは効かねぇ」
Bヨシダ「大して強くないようだな・・・オトリか?」
Bイグ「なら、早い所倒した方が良いな」
8人のビオナイクラーがリターン光線を放つ。
「zzz」
ゼニゴンは一円玉の雨を降らして光線を弾き返した。
Bシグレ「厄介だな・・・」
ビオナイクラー達が転がってリターン光線を回避し、ゼニゴンの後ろに回る。
「zzzz!!」
ゼニゴンが巨大な石のお金を連続噴射した。
ビオナイクラー・マトアがそれを殴り飛ばす。
その間にビオナイクラー・ニトロがゼニゴンの口を塞ぐ。
「zz!?」
ビオナイクラー・カンタが指を銃のように構え、ゼニゴンにリターン光線を放った。
泡へと還るゼニゴン。
カプセルが地面に落ちて、中からコゼニ研究員が姿を現した。
8人のビオナイクラーも変身を解き、研究員の元へと駆け寄った。
コゼニ研究員「いてて・・・」
ゼロ隊員「・・・お前、大魔王か?」
コゼニ研究員「ハッ!マズいっす!急ぐっす!
大魔王は元の三人の体に戻っていったようっす!」
イグ隊員「本当にとっつぁんなんだろうな?」
コゼニ研究員「ええ、今までずっと意識は有ったんですが、大魔王に全行動を支配されてて・・・自分で行動する事は出来なかったっす」
ヨシダ隊員「まあとりあえず生きてて何よりだ・・・」
コゼニ研究員「でもずっとやられっぱなしじゃぁないっすよ。今までの研究開発で分かった事があるっす。
次に現れる完全体のボディにはリターン光線は通じませんが、
人体収納カプセル本体にリターン光線を浴びせさえすれば簡単に機能停止まで追い込めるっす。
更に、完全体の技術を元に思いついたんすが、
皆のカプセルを単体で起動できる媒体要らずのカプセルに簡単に改修できそうっす」
マトア隊員「つまりビオナイクラーに変身せずとも、カプセルだけで呼び出せるようになるって事ですね?」
???「ほう!そうか。我等が完全体を開発している間にその技術を思いついていたとは・・・
さすが研究員と言ったところか?貴様の意見も聞くべきだったかな・・・
だがどちらにせよ、今からでは遅い。それを改修する暇など・・・無いのだからな!」
ゼロ隊員「!?・・・誰だ!!」
隊員たちの後ろには、三人の男が立っていた・・・。
つづk・・・・次回、最終回!
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