タケさん・・・
どうして僕はここに……テルミワーイ!?(ジャッジャーン)





集められた者たちに、流し込まれる真実の記憶は、膨大だった。

長きに渡る争いの記憶の断片が、その当事者たちの、またその血を引く者たちの頭をよぎっていく。


記憶の時代が大きく移る。
アプルーエ山岳地帯・かつてのリムー居住地付近。


早朝、生体研究機関・ビオクロニクスの研究チームを乗せたヘリが、ふもとの平地に着陸した。
彼らの目的は、まだそれほど開拓されていないこの地域一帯を調査し、
古代のバイオニクルの手掛かりや、現代の希少生物などの、研究材料を探す事であった。
そういった研究は、生体兵器であるアームヘッドとも関係しており、国家からも一目置かれていた。

「準備は出来たか?セルゲイ」
機関の調査服に身を包んだ男。
その名もファーファ・エラテン。

「待たせた、エラテン」
セルゲイ・ポマレリは大きなリュックを担いでヘリを降りた。

二人の後に六人が続いて、研究チームの探索が開始された。
調査は前日の打ち合わせどおり、四方角に二人ずつに分かれて行う。

セルゲイ、ファーファのチームは、山の聳える東にひたすら歩き続けたが、
枯れ木の多い寂れた森が続き、更には小さな虫さえも姿を見ることが出来なかった。

「いったいどうなっているんだ?」
セルゲイ・ポマレリが呟く。

「土中にはうじゃうじゃいるが、上にはさっぱりだ」
ファーファ・エラテンが言って、スポーツウォッチを覗く。
気温14℃、湿度11%。

「壊れたか?」
エラテンが腕を振っていると、セルゲイが振り向いた。

「こっちは92%」


道なき道を進む内、枯葉の下に、不自然に石が散らばっている事に気がついた。
それから獣道の入り口を幾つも見つけて、ようやく生物の手掛かりを見つけたかと思ったが、
思しき毛やフンなども全く無かった。

やがて岩の山が見えてくる。
周辺の植物が剥げてきた事に気づいた。
広場になっていた。
不自然に盛り上がった土の山が点在している。

「こんな場所に村でもあったのだろうか」
セルゲイが歩をゆるめていると、先行したエラテンが声を上げた。

「見ろ、化石だ」
エラテンがうずくまって見ているものは、恐竜のフンに似ていた。
地面の岩に張り付いているが、立体的な形も残っている。

「長い間、誰も足を踏み入れていなかったようだな」
セルゲイが呟く。
既に崩れた後のような、岩が積み重なって出来た山を見上げて、
その下に、人間でも入れそうな隙間がある事に気がついた。

「大発見の予感しかしないな」
その視線の先を見たエラテンは、躊躇うことなく岩の隙間へと近づいていく。

「まさか、入るつもりじゃないだろうな?」

「俺達は調査に来たんだ。入らなきゃ調査は出来ない」
懐中電灯で洞窟を照らす。

「どうなっても知らないぞ?」
セルゲイが入り口まで来て言った。
声が闇に吸い込まれていく。

「君も来るんだよ。単独行動させたと思われたら君も困るだろ?
 誰も行った事の無い洞窟探検、わくわくしないのか?」
ファーファ・エラテンは姿勢を低くしながら、岩の洞穴を進んでいった。

「やれやれ、私たちにはもう、家族だっているというのに」
そういうセルゲイにも強い好奇心は残っていた。

狭い一本道をひたすらに進み、ようやく天井が高くなった。
足元の窪みには、浅い水溜りが幾つも出来ていて、ようやく調査が始められそうだ。

セルゲイが水を試験瓶に入れたとき、エラテンが大声を上げた。

「いったいどうした?」

「いきなり大発見だ」

エラテンの足元には、単なる水溜り、だけでなく銀色の液体が渦巻いていた。
見ると、頭上の岩の隙間から流れ出ており、薄っすらと不気味な光を帯びている。

「エネルギー・プロトデルミス……」
セルゲイが呟く。

「君もそう思うだろ?絶対そうだろうな」
エラテンはそう言いながら、まだ先を急ぐ。

「報告しなくていいのか?」
セルゲイが無線を取り出して言う。

「電波は届かないだろ、それにわざわざ戻るのも愚じゃないか?」
エラテンの目が好奇心で光った。

銀色の液体は頭上からも滴り落ちていた。

「くれぐれも触れるなよ?」
セルゲイが言うが、返事が遠いほどエラテンは離れていた。

やがて、エラテンの足が止まった。
セルゲイが近づいていくと、彼の前方には光に照らされた壁が見える。
追いついて、その先を見た。


銀色の池だ。
それは生きているようにうねり、神秘的な光を放っている。
周りの岩壁から、蒸気が噴いて、霧が二人を包んだ。

「信じられない」
セルゲイが呟く。

「エネルギープロトデルミスは、あるとしても地殻の最深部と言われてきた。
 これは、ものすごいぞ」
エラテンが早口で言った。

「触らない分には影響ないみたいだ」
セルゲイが上を見る。六角形のつららが垂れ下がっていた。

「セルゲイ。この液体金属に触れたらどうなる?」

「クイズか?答えは、ただでは済まない」

「……知っているかセルゲイ。E.Pは突然変異に密接に関わるって事をさ」
エラテンは知的好奇心のようなもので興奮しているらしかった。

「初耳だな。おい、気をつけろよ」
セルゲイが言っている間にも、エラテンは落ち着きなく銀の沼の前でうろうろ。

「デデバリィって知っているか?」

「もちろん。カモノハシの親戚で生きた化石の……」

「そっちじゃない。
 俺の先祖が体験した話だよ。特殊能力を持った生物の話さ。
 そう争い。ゴネドの先祖が戦った、リムーの守護者」

よほど興奮しているのか、エラテンの言葉は繋がっていなかった。
しかし、セルゲイ・ポマレリにはその意味が分かっていた。
エラテンは、研究で発見がある度にこの話をするので、
彼の研究する理由は、その古代の特殊な生物について調べる事なのではないか。

「そうだな。確かその伝説はちょうど、この辺りの話だったはずだ」
そして、セルゲイは、自分の妻マニー・リムーが、その伝説と無関係でない事も、すでに知っていた。
セルゲイは、エラテンから話を聞き、妻の正体を察する前から、デデバリィ等古代生物に興味を持って研究していたのだ。

「やつらが、何でそんな風になったか、なんで進化したのか?」
エラテンは、セルゲイの妻がリムー族の末裔、しかも旧姓がリムーと言うほど直系である事を知らされていなかった。

「……E.Pによるものだと?」
しかしマニー・リムー自身も、過去の伝説を教えられていなかったようで、
セルゲイは、妻に彼女自身の正体を隠して、守ることにしていたのだ。

「ありえなくはないだろ?
 こうして目の前に、触れられる場所に、奇跡の物質の泉があるんだぜ?」
エラテンは今にも、プロトデルミスに触れてしまいそうだった。

「仮にそうだとして、お前が突然変異してどうする?」
セルゲイが言うと、エラテンが止まって、池の真ん中を注視した。

大きな泡が上がってきて、ぼちゃんと弾けた。
E.Pの池の底から、光るものが浮かんできている。

頭を出したそれらは、まさしく、アームコアであった。
四つのアームコアは、それぞれ別の色の光を放ち、うねる水面を流れた。

「ほら、これはさ、元々別の何かだったんじゃないか?」
エラテンは浮いている宝玉に手を伸ばした。

「アームコアに突然変異した……おい!それに触ったら……」

セルゲイの忠告は遅かった。

片手で掴もうとしたアームコアは、手に押されて沈み、エラテンの上体は銀の池に投げ出された。

しぶきが上がって、セルゲイが手を伸ばした時、ファーファ・エラテンはE.Pに吸い込まれていた。


「なんだ!くそ、助けてくれえ!」
ようやく我に返ったエラテンは、プロトデルミスの中で何度ももがいた。
それによって弾かれた四つのコアが、セルゲイの足元に転がる。

「まったく!何とかならないのか……!?」
困惑するセルゲイをよそに、エラテンはどんどん池に引き込まれていく。

「が、は、はやく……」
池が強く輝いて、エラテンの体も光を放ち始める。
洞窟が微妙に振動し始める。コアは背後に転がっていく。
苦痛を浮かべるエラテンは、セルゲイに向かって手を伸ばした。
その手はすでにバイオニクルと化していた。

セルゲイはそれ以上、手を伸ばせずにいた。
あのプロトデルミスの付いた手をとれば、自分も同じ姿になってしまう。
そして、目の前で起こる神秘的な現象に、呆然とし体は動かなかった。

エラテンがあまりにも突然すぎる変異をしているのだ。
彼が人外と化し、プロトデルミスの池に完全に沈んだ後、更に激しい揺れが洞窟を襲った。
セルゲイは無心で洞窟を駆け抜け、入り口付近の崩壊に巻き込まれた。


ポマレリが眼を覚ますと、シートの上に転がされていた。
起き上がると、救助隊と他の研究チームの姿があり、目の前には四つのアームコアが置かれていた。

「無事だったか。コレはお手柄のようだが……
 いったい何があったんだ?エラテンはどうした?」

セルゲイは研究仲間の問いにも答えず、目の前の光景を見続けていた。

崩れ去った岩山のあった場所には、金属の山が出来上がっていた。
エネルギープロトデルミスだったものは完全に凝固していた。
その恐ろしい金属は、その源泉を自ら封じたのだ。

セルゲイはその後、この地にE.Pが隠されている事と、
ファーファ・エラテンの本当の末路を、誰にも口外する事は無かった。

その結果、彼は四つの特殊なアームコアを発見した手柄を、一人で得る事となったが、
裏では、手柄を巡ってエラテンと何かあったのではないかと、余計な噂も流される羽目にあった。



ファーファ・エラテンには、長女ハミングと長男アリエールの二人の子供がいた。
エラテンの死から数日後、謝罪に来たセルゲイ・ポマレリが持ってきたのは、ファーファの発見と評す一つのコアであった。
四つのアームコアは、既に一つがプラント帝国によって奪取され、
二つはリズ軍が回収し、最後の一つはセルゲイが隠し持っていたのである。

そしてベドニーゼが目覚めた時、彼の体は完全にアームコアと同質になっており、その肉体が復元する事はなかった。
コアの意思が周りを見たとき、そこにいる人々が、ゴネド族の末裔だと理解した。

ベドニーゼの記憶は、遠き日の闘争から途絶えていた。
彼が最後に見たのは、何も言わず、自分を封印しようとするシュビツェの姿。
その判断は、自分を助けたはずのテル・リムーや、ゴネドの人間を嫌っていたホズピタスによるものなのだろう。
ゴネド族は必ずしも悪じゃない。心を持った者もいる。
にもかかわらず、戦いを受け入れたリムーは、愚かだ。

ベドニーゼは、この若いゴネドの末裔たちを、
自ら導いて、正しいゴネド族に戻そうと考えた。
かつてのソババのような。
例え、彼女の血を引いていなかったとしても……。

ゴネドの長、ゴーン・ドゥがそうであったように、ゴネド族は男が主導権を握っている。
つまり、アリエールを現在のゴネド族の主導者に仕立て上げれば、その方向は変わるはずだ。
その為に、姉のハミングを上手く使って、未だ戦いの残るリムー族と戦わせたり、アリエールを守らせることにした。

こうしてベドニーゼは、一時の恩人リムーよりも、心優しいゴネド族の再興を信じこみ、ゴネドの味方として行動を始めた。

結果、デデバリィと騙ったベドニーゼにけしかけられたハミングは、リムー族への憎悪を募らせ、その命を散らした。
そうした経験や、血統の歴史を学び、また、ベドニーゼの鷹の目で様々な情報を受け、
育ったアリエールは、まさに新たなゴネドの長に相応しい者へと成長を遂げた。

それは元々ベドニーゼの望んでいたソババではなく、ゴーン・ドゥに近づいたことを意味しているが、
ベドニーゼはいつの間にか、自らが育て上げた現在のアリエールに、心酔していたのだ。

ソババではなく、ゴーン・ドゥに味方することが、
完全にリムーに背いたのと同義でなるだろうことを、彼は忘れていた。


そしてまた記憶が過ぎていく。

二つの断片。ある男とある少女。マクタスとメアリー。
燃え盛るデデバル市に、崩れる民家と庇うバンシール。
戦っていたのはマクタスだった。
しかし、ケナーとメアリーを救ったのもまた、マクタスだったのだ。

加速した映像が押し寄せて、近年に迫る。
全てが頭の中に書き込まれて。また削がれていく。



大きなめまいがして、トマスはまた元の場所に戻った。

リムーテルの目下、彼らは再び対峙していた。

集められた者たち、既に死んでいる者の多くは、
遠い昔の真実を知っても、平然と姿を消していった。

しかし、残されたトマスらは、そういう訳にはいかないのだ。


「……ウソよ!そんなはずない!!
 私の、父さんが、自分で勝手に死んだって言うの!?
 そんなの、ケナーの親父が殺ったんじゃ、それじゃ、
 私が、今までやってきたことは、なんだったの!?」
ハミングの精神が嘆いて、像がぶれた。

「……ハミング……おまえ……」
一体のバイオニクルがぼんやりと姿を現した。
ファーファ・エラテンは、この姿のまま命を落としていたのだ。

「父さんだって!?違う!?なに!?」
錯乱するハミングの亡霊は、声をどこまでも反響させた。


その光景を見て、大いに笑ったのは、血縁であるアリエール・エラテンだった。

「す ば ら し い も の を み た !
 今見た記憶が何でも、父さんの死因や姉さんの今までの人生が何であったかも、関係ない。
 リムー族の隠していたトリックは、シュビツェの能力とエネルギープロトデルミス!!」


喜ぶアリエールに襲い掛かったのはハミングだった。
「アンタ……いったいどうしちゃったのよ!?」

「姉さん。ボクは今更、ゴネド族の歴史をおさらいしたところで、どうもしないよ」

「何を言って……ふざけているの?
 私も父さんも、ばかだって言いたいの?」
ハミングは、こんがり焼けた顔をアリエールに近づける。

「ゴネド……ゴーン・ドゥは君らじゃない。ゴネドはボクなんだ。
 君らがどうあっても、ゴネドは傷つきはしない。君らはゴネドとは思わない」
アリエールは笑った。

「どうかしてる……」
ハミングでさえも呆れる相手に、トマスらリムー側も、怒りを募らせることしか出来なかった。

「何か勘違いしてない?
 ボクは、父さんや姉さんの為に戦ってたんじゃあない。
 ゴネドのリムーへの完全勝利、そしてボクの神話を創める為さ。
 ……ボクをそう導いたのは、オマエなんだよ?ベドニーゼ……」


リムーの守護者の面々は、ただうつむいていた。
何もかもが大昔の小さな誤解で、もっと早くリムーテルが目覚めて、こうして知らせていれば……。
こだまするアリエールの笑いの中、シュビツェが動き出す。

「怖かったのだ……これ以上の犠牲が。
 リムーの意思を遂行するには、我らが自ら姿を消す他なかったのだ……」

その言葉が刺さったのはベドニーゼだった。
リムー達を見限っていた彼にとって、自分は裏切られていなかったという事実は、今更聞きたくなかった。

「……アリエール……」
ベドニーゼはうわごとのように呟いた。

「ベドニーゼ。ボクはソババのようにはならない。破滅を選ぶはずがない。
 もしもまだ、その望みを抱いているのだとしても、
 なぜボクの元に、メアリー・トゥースを寄こすんだ?」

メアリーの姿はこの空間にあった。
しかし、先の記憶を見ていても、今、ここで動く事は出来ない。
ベドニーゼの精神操作を受けているのだ。
彼女の実体がどこにあるのかが、少なくともアリエールの元に向かわされている事が分かった。


「ベドニーゼ……貴様、この期に及んでゴネドを……」
ホズピタスは、元を辿れば誰も、憎むべきではないと知ったが、
それでも今のベドニーゼを許しておけなかった。

「やめろベドニーゼ!
 もう、リムーの守護者に戻る気はないのか!?」
デデバリィの声も響く。


「……戻れるわけないだろォ!!」
ベドニーゼと、メアリーの像が消えた。


「アリエール!!
 いったい、お前は、何を求めているんだ?
 これ以上、何を続けようっていうんだ?
 ゴネドの勝利の先、何がある?神話だと?
 またこんな、同じような悲劇を繰り返すのが、神話だって言うのか!?」

トマスは叫ぶ。


「テル・リムーのような物言いだな!!
 繰り返すことが神話ではない。
 リムーの途絶えた完全勝利の先に、繰り返すことはない。
 全てが変わるんだ。メビウス・リングを切った先は!
 そこに神話の創まりがある!!」

アリエールの叫びが響きわたる。
この、奇妙な空間が、悪夢が縮みはじめていた。


「ケナー。私を哀れむのは止して。もう忘れたい。アンタもそうなんでしょう」

「ハミング……あなたの弟は、止めてみせるわ」

「何も言わない」

向かい合った二人の姿は逆の方向へ消えていった。


やがて、生きている者は目覚め、死んでいる者は行くべき所へ還り、トマスだけが取り残された。


「知りたかった真実を、いくら知ったって、これじゃあどうにもならないじゃないか……。
 これから、どうなってしまうんだ……アリエールを、マクタスさん達が止めてくれるだろうか……。
 メアリーさんを助けたら、マクタスさんと分かり合ってくれるだろうか……。
 所長の家族は……リムーの守護者とテル・リムーは……」


トマスの気が遠くなり始めた時、突然、少年が現れた。


「トマスさん……」
少年はトマスとよく似ている。数年前の姿だった。

「アロイージ・ポマレリ?」
二人が向き合った。

「やっぱり、トマスさんはまだ、僕の中にいたんだ」

「もう一度だけ、体を貸してくれないか」
トマスは率直に言った。

「……トマスさん、それは違うよ。
 今になるまでの僕はトマスさんで、前のトマスさんは僕だったんだ。
 だから……」
アロイージが言いかけた。

「いい加減、僕だって君に体を返してあげたい。
 だけど、一度リムーの末裔として戦ってしまった以上、どうしてもアリエールを止めたいんだ」

「トマスさん、僕はもう、元に戻らなくたっていい」

「そんな風に、気を使わなくたっていい」

「違うよ。嫌なんだ。長い間、トマスさんの夢を見て、起きたら、全てが変わってた。
 家も無い。姉さんも父さんもまるで別人のようで、母さんもいない。
 これから、中学生のままの、アロイージ・ポマレリとして、生きていける自信が無いよ。
 だってそれまで、僕の体はデデラボのトマス設計士だったんだから。
 それに……僕はずっと夢で見て、トマスさんに憧れてたんだ。
 僕が、トマスさんになれたことを、僕は誇りに思ってるよ」

「……僕が君の立場なら、自分が何であれ、体をゆずるのは、嫌だと思うはずだよ」

「トマスさん、それは本当に別の人だった場合のことだよ。
 僕たちはお互いに、他の誰かじゃないんだよ。
 ここに二人いるようで、本当は一人しかいない」
アロイージは満足げに笑った。


「……ありがとう、僕」

「いえいえどうも、僕」




新デデラボメンバーとマクタスは、鋭い耳鳴りと幻覚からようやく開放された。
最初は何が起こったか分からなかったが、そこで見た記憶から、
まさしくリムーテルが、この現状を変える為に、力を尽くして起こした現象だと思えた。
テル・リムーの為にも、アリエールを止め、この醜い争いを収めなければ。

しかし、トマス、いやアロイージは依然として気を失ったままで、一同は困惑した。
今までアリエールと戦う事が出来たのは、アロイージがトマスだったおかげだ。
せめて決着をつけるまでの間。皆、本心ではトマスの復活を願った。

ケナーはその思いを隠し、懐かしい弟の顔を見つめた。

そして目覚めた。
しばらく前と同じように、ゆっくりと目を開けるアロイージ。

「……どっちだ?」
静寂の後、ブレジンが思わず呟いた。


「僕は……
 アロイージ・ポマレリ。
    
 ……そして、トマス・ボーリー。
 僕は彼を知り、思い出して、それが自分自身だと分かりました。
 だから僕はアロイージであり、トマスなんです」

トマスは清々しい顔で言い切った。


「おかえりなさい、トマス」
ケナーが思わず言う。
弟は、入れ替わりに遠くへ行ってしまった訳ではない。
彼はまさしく、アロイージでトマスだと自分で言ってみせたのだ。

一同が一息つく中、トマスは直ちにベッドから降り、窓の外を睨んだ。

「メアリーさんは、ベドニーゼの感情操作で、アリエールの元に誘拐されている。
 今すぐ乗り込んで、アリエールを、この戦いを止めるんだ!!」


よみがえったトマスの一声に、一同は太古の記憶と決意を胸に、出立の準備を開始した!



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by kozenicle | 2012-01-22 00:02 | ストーリー:デデバリィ | Comments(0)

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