人気ブログランキング | 話題のタグを見る
最近写真少ないな(おい
その内どっと増えそうだがな!






アームヘッドの整備を終えたトマスは、工場棟から研究棟へと戻る廊下を歩いていた。

研究棟の中に入ってすぐに、前方からマクタスが歩いてくる。
2人はいつものようにお互いに軽く挨拶をして通り過ぎた。
トマスは廊下の壁に口を開けるマクタスの部屋の前をそのまま通り過ぎようとした。

すると、バサ、バサと重ねた紙が落ちるような大きな音が廊下に響いた。
トマスは驚き、マクタスの部屋のドアを見る。
鍵が開いているようで半開きの状態だ。

トマスは何故だか気味が悪くなった。
マクタスさんは良い人だが、とても謎が多い人だ。
勝手な思い込みかもしれないが、時々フッと居なくなっている気がする。
普段自分達の見ていないこの部屋では一体何をしているのだろうか?
何でもないことだがどうしても気になってしまう。

マクタスはもう廊下の向こうへ行ってしまった。
もしかしたら泥棒でも居るのかもしれない、トマスはそう自分に言い聞かせ、マクタスの部屋を覗いた。


部屋全体を見回すと、整理整頓されているがどこか殺風景な印象を受けた。
トマスが想像していたような奇怪な研究道具などは一切無い。
目立つのは裏表に本を置ける大きな本棚だけだ。

トマスは思い切って本棚にゆっくりと近づく。
床に散らばった本が見えてきた。
もう一歩踏み出した時、再び本が落ち、棚の後ろで影が動いた気がした。


「誰だ!」
トマスはそう言い、本棚の後ろを急いで覗いた。


「…シーッ!気づかれたらどうすんだ!」
そこにはブレジンが身を屈めて、本を手に取っていた。

「何でまた勝手に?」
トマスは呆れた風に言った。

「お前も何で入ってんだよ、不法侵入だぜ」
ブレジンが本を開きながら言った。

「僕はただ泥棒でも入ったかと思って…」

「今はそんな事話してる暇は無ぇ、お前もいい加減気づいてるだろ?マクタスさんが何か隠してるって事」
ブレジンは格好つけて言った。

「え?」

「ガモゲドンと話せるようになってから急に気づいちまった訳よ、マクタスさんはガモやデデの事を知ってるんだ。そうでなきゃ、アームコアに話しかけたりしねぇだろ?」

「そんな事があったんですか?」
トマスは小声で聞いた。

「ああ、独り言かもしれねーけどな。そうだとしても最近マクタスさんの独り言が多くなってる気がしてな」

「で、ここで何を?」

「手掛かりでもないかと気になって、そこでこの俺ブレジン・ニールファット様はこの古い本棚に目をつけたって訳だぜ」

「なにか手掛かりは掴めましたか先輩?」

「いまんとこ、古いSF小説と哲学の本しかないぜ…」
ブレジンはそう言い、本を次々に降ろした。

「ああ、そんなに降ろしたら片付けが大変じゃないですか!」
トマスは床に落ちた本に手をかけた。
それは大きくてボロボロの本。絵本だろうか。

表紙を見てみると”六匹のかいぶつ”と書いてあった。
「先輩、これは…」
トマスが言うと、ブレジンはその本をぶん取った。

「随分古そうだな、どれどれ…」


///////////////////////////////////////////

むかしむかし、あるところに六匹のかいぶつがいました

かいぶつはわるい獣使いにやとわれていました
ゆうしゃたちがわるい獣使いを倒そうとすると、いつも邪魔をしてきます

あるとき、一匹のかいぶつがゆうしゃたちの元へとやってきました 
ゆうしゃたちはかいぶつを剣で突きましたが、
かいぶつは自分は味方だと言って話しかけてきました

かいぶつが言うには「虫のかいぶつの仲間を捕まえておびきよせれば、かんたんにやっつけられるよ」
ゆうしゃたちはその言葉を信じ、すぐさま用意しはじめました。

そのころゆうしゃたちの元から帰ってきたかいぶつは、
敵のすみかに出入りしたため
ほかのかいぶつたちに「うらぎりもの」といわれるようになりました

ゆうしゃたちはたくさんの虫を捕らえ、
折った角を武器に、
むしった羽から盾をつくりだして
かいぶつが現れるのをまちました。

そのときまたさっきのかいぶつが現れます。

かいぶつが言うには「獣使いがきけんな”ぎしき”をしようとしているぞ」
ゆうしゃたちはぎしきを止めるために獣使いの元へしゅっぱつしました

仲間がころされたことを知った虫のかいぶつは
ゆうしゃたちの村で大暴れしました
四匹のかいぶつたちもそれについていき暴れます

虫のかいぶつがゆうしゃの家族をころそうとした、そのときです。
うらぎりものが虫のかいぶつを止めました

「なにをする このうらぎりものめ」
虫のかいぶつはおそいかかりましたが、
うらぎりものに投げとばされてしまいました

ゆうしゃたちは無事にぎしきをふせいで、獣使いの一族をほろぼしました。
仲間がまけたことを知り、かいぶつたちはいなくなりました
ゆうしゃの家族を守った”うらぎりもの”は、
村人にたいせつにされて”まもりのかみ”とされたのでした。

めでたしめでたし

///////////////////////////////////////////


「よくある昔話だな。悪い奴を倒してハッピーエンドだぜ」
ブレジンがどうでもよさげに言った。

「六匹のかいぶつ…裏切者…やっぱりこれはリムーの守護者の資料じゃ…」
トマスが驚いて言った。

「は?そーなの? だとしたらデデバリィは本当に裏切者だな。この本じゃ無理矢理英雄扱いされてるけど」
ブレジンが怪物の絵を指差し言った。

「とてもじゃないけど信じられない…これが本当ならホズピタスが被害者じゃないか」
トマスが暗く呟く。

「信じられないならデデバリィに聞いてみたらどうだ?」
ブレジンが言う。



その時、部屋の電気が点く。
「本を読む時は明るくしたらどうかな?」
マクタスが入り口から言った。


「!・・・あ、あの、勝手に入ってすみません!」
トマスが焦って言った。

「ご自由に読んでもらって構わないが、一言言ってくれると嬉しいな…あと、読んだ後は片付けておいてくれよ」
マクタスはそう言い、再び廊下へと去って行った。


「はあ、ビックリした・・・先輩何やってるんですか!」
ブレジンはまた本棚の影に隠れていた。

「危ねぇ危ねぇ、この絵本持ってるの見られたらヤバい事になる所だったぜ」
ブレジンは再び表紙を見せた。


「…ゴ…ネ…ん?」
トマスには、表紙に書かれた作者名がよく読めなかった。

by kozenicle | 2009-11-04 19:18 | ストーリー:デデバリィ

<< 龍の巣だ!    久々にワロタ >>