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こみさん・・・
ラストバトルだッッッ!!!



落日のシーグザール。

第62話: XXX×X 前編_b0142778_0334421.jpg


神の子『シル』と魔獣『デデバリーィXXX』が向かい合うそこだけは、
まるで昼間のような明るさを保ったままだった。

【随分ともったいぶるのだな ボーリー】
アリエールの声が街に木霊する。

「僕たちは、時間稼ぎしていた訳でも、これからする訳でもない。
 お前を『止める』ために来たんだ、アリエール!」
トマスの返答を聞いて、アリエールの顔が緩んだ。

第62話: XXX×X 前編_b0142778_0343882.jpg

デデバリーィXXXは、6つのコアと6人のパイロットを搭載する、
もちろんトマスの全力を注ぎ込んだアームヘッドだ。
デデバリィの爪、ホズピタスの角、ガモゲドンの牙、
ゾムエイルの鱗、ベドニーゼの翼、シュビツェの盾が、
それぞれアームホーンとなって装備されている合成獣である。
胸部にはトマス、右肩にメアリー、左肩にブレジン、
右脚にはマクタス、左脚にはボールド、尾部にはケナーが乗り込んでいる。
操縦系統は、主操縦士1名と残りのサポート操縦士を、適宜切り替えて操作する形式である。
主操縦士の全体への操作入力を元に、サポートコクピットにも指令信号が渡り、それぞれが各自の判断で担当部位を動かす。
これは、大型の機体なのでそれぞれのコクピットから状況を見極めた方が、確実な判断を得られるからである。

6人のパイロット達の頭に、リムーの守護者たちの像が浮かんだ。
コアを砕かれ、久しく見ていなかったデデバリィ、ホズピタス、ガモゲドンの姿も、
薄っすらとしているが、現れた。

「デデバリィ!!」

”リムーを取り戻すまでは死にきれない!
 行くぞトマス!!”

デデバリィの声を聞いた直後、トマスは座席の背後に音を聞いた。
覗き込むと、老犬が引っくり返っていた。

「クッキー?勝手に乗っちゃだめじゃないか!」
”彼もリムーテルのコアに 何か感じ取ったのかもしれない”

クッキーは、トマスの折れた左腕の隣に来て静かに座った。

「オレ、今までになく緊張してきたぜ・・・・・・」
ブレジンが呟いた。

「この機体が、奴の念波に耐えられるかどうか・・・・・・
 まずはそれが分からなくては」
マクタスも、未知の敵を前にどの程度戦えるかが不安だった。

「攻撃される前に倒しちゃいましょう?」
そう言ったのはメアリーであった。

「それにこれだけ気合入れて造ってあるんだ、一撃なんてことは」
しかしボールドもその結果を恐れていた。

「たとえ駄目でもね、命ある限り戦って見せなければ」
ケナーがふと呟いた言葉は皆に聞こえていた。

「信じましょう、そして勝ちましょう!!」
トマスはXXXの拳に決意を込めて、第一撃を構えた。

「おう!・・・・・・早速信号来たぜ!!」
ブレジンが左の拳を振りかぶらせた。

【トマス・ボーリー メアリー・トゥース ブレジン・ニールファット 
マクタス・パール ボールド・ポイツ ケナー・ポマレリ 汝らに天罰を下す】
シルの宣告が響き渡った。
そして口の中に念波動の光が収束し、XXXへ向け至近距離で放たれた。

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「あぶないッ!?」
メアリーがとっさに右腕を動かし、波動砲を受け止める。
凄まじい衝撃を受けたが、破損は無かった。

「よっしゃ!」
「リムーの守護者、6つのコアの力か!?」

「チャンス、今だ!!」
トマスからメアリーへの信号は、右ストレートだった。

「えっ!こんなすぐ!!」
メアリーは半ば流され気味に拳を放った。

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XXXのパンチがシルの顔面にめり込み、拳は火花を散らす。
予想外のパワーにシルが仰け反った。

「まず一発!」
「このまま畳み掛けるよ!」
ボールドとケナーが続けて言ったが、シルは首を振って持ち直した。

【上出来だよボーリー だが何時まで持つかな】
シルが全身から強い光を放った後、球体の壁に包まれた。
念波壁の放つ振動は、XXXにも伝わっていた。

”そんな盾で 意思の剣が防げるものか!!”
ホズピタスの声を聞いたトマスが、XXXのアームホーン「ホズピタスの角」を繰り出す!
角はバリアに食い込んで、それの放つ波形をゆがませた。
このホーンの力は、ホズだけでなく守護者全員から発揮されるものだ。

そしてブレジンのコクピットに信号が走る。
「ほいきた!お見舞いと行くぜ!」
左腕のアッパーは、シルの顎にクリーンヒットした。

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だがそのカウンターは瞬間的だった。
バリアの内側から発する波動の槍が、XXXを撃つ。
防げず、トマスの乗る胸部に激しい衝撃が走った。

「大丈夫かトマス!」
「ええなんとか!!」
「お前のその体調じゃきつい!
 トマス、オレと交代だ!」

ブレジンが言うと、XXXの主操縦はトマスからブレジンに切り替わった。
「まかせましたよ、先輩!」

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XXXはガモゲドンのような咆哮を轟かせた。

「やってやろうぜ、ガモゲドン!」
”ジレブン リムー助ける!”
それを合図にXXXは急加速する。

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速度と共に放たれた両の拳がシルに叩きつけられた。

シルは大きく退いたが、すぐさま口から念波を吐いた。
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”レブジン!!”
ブレジンが知覚する前にガモゲドンによって波動は弾かれた。
しかし気づくとそれが牽制でしかないことが分かった。
シルの頭部に波動が集まって、大きな角が形成されていた。
収束して剣となって落とされた。

「早い!」
XXXは後ろへ向けて再び急加速する。
寸前で波動角をかわした。
「あっぶねえ・・・!」
そのままシルの側面に回ると、お返しのパンチを食らわせた。
シルは仰け反りはするが、傷を負っているようでもない。

【これはどう防ぐ?】
シルが体の各部から波動を放って、複数の輝く槍を生み出した。
それはそのまま、XXXの各コクピットを狙って迫る。

「チッ!・・・ワールズ・コライド!!」
ブレジンの叫びとガモゲドンの咆哮、XXXは調和を発動する。
ワールズ・コライドによって瓦礫から生み出された、恐竜群が飛び回って、念波槍を相殺する。

「どんなもんよ!」
しかし、シルはその攻撃を止めない。
執拗な攻撃をブレジンはその方法で防ぐことしか出来なかった。
その応酬は長時間に及んだ。


(ちきしょう・・・・・・なんて野郎だ、全く消耗の気配を見せねえ、それに)
ブレジンは、ガモゲドンの像が薄く、声も遠のいていっている事に気づいた。
「ガモゲドン、大丈夫なのか!?」
”オラ まだ 戦える”

ガモゲドンの唸りに、ブレジンは応えた。
XXXはシルに突進をかけ、波動を受けながら辿り着いた。
両腕で捕縛すると、大口を開けて、シルの翼に牙を叩き込んだ。

「いつまでもテメーの好きにさせるかよ!ワールズ・コライドッ!!」
シルの足元から何かがスルスルと上がってくる。
土で出来た毒蛇は、石で出来た毒牙を、アリエールの顔面に食い込ませた。

【貴様!!】
頭に血の上ったアリエールは素に戻って、すぐさま反撃に出る。
シルの脚が波動を纏った刃として、上がってきていた。
それはブレジンのコクピットを狙って、一直線に向かう。

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”オラ・・・・・・ブンレジも 守る・・・・・・”
ガモゲドンの意思によってシルの脚は阻まれていた。
ブレジンは、ガモゲドンの像が次第に崩れていくのを見ていた。

「ガモゲドン、お前・・・・・・!」

”リムーを 助けて 守って・・・・・・
 ・・・・・・ありがとー ブレジン”

第62話: XXX×X 前編_b0142778_0455265.jpg

XXXはシルの足を噛み締め、振り回すと地に叩きつけた。
シルが衝撃で吹っ飛んだあと、ガモゲドンの体は、その眼を中心に次第に消えていって、なくなった。

「あばよ、また会おーぜ、ガモゲドン・・・・・・」

ブレジンは別れを惜しむ反面、
永い間、閉じ込められていた魂が、ようやくコアの呪縛から解き放たれて、よかったとも思った。


二日目。


既に主操縦はブレジンからボールドに切り替わり、ゾムエイルが躍り出た。

第62話: XXX×X 前編_b0142778_0463096.jpg

”ガモゲドンを消した上 リムーの力を弄びおって!!”
憤慨するゾムエイルの声、それからシルは答える。
【否】
その答えは聞こえていたが更に返しはしなかった。

”我らにも調和能力があれば・・・・・・”
不意にゾムエイルがぼやく。

「調和が無くたって戦えるだろ!!」
ボールドは強気にそう返したが、
これまでに調和を使った事は無いし、欲した局面も幾つもあった。

煩いを振り切るようにXXXは突進する。
シルは再び波動槍を放つが、XXXはそれを殴り落とすようにしながら避けた。
そして側面を捉える。

第62話: XXX×X 前編_b0142778_0465874.jpg

「がら空きッ!!」
XXXの横殴りを食らってシルを包む光が拡散する。
反撃の波動攻撃は、急後退したXXXに避けられた。
続けて幾度も波動の矢を放つが、ボールドとゾムエイルはウナギのように逃れる。
その合い間に拳を食らわせ、XXXは堅実にダメージを与えていた。

暫くそうして戦う内に、シルも活発に動くようになり、XXXの背後から攻撃しようと、少しずつ回っていた。
後ろからの念波矢を、XXXは翼を羽ばたかせて弾いていた。
背後への迎撃も上手くいっていると思ったとき、弾き返していた隙をつかれ、シルはXXXの真後ろに迫っていた。
そのまま脚を展開して、XXXの両の翼を捕らえる。

「どうしたケナー、大丈夫か!?」
ボールドから、翼と尾部担当のケナーに通信が行く。
「翼が捕まったわ、それに!!」

第62話: XXX×X 前編_b0142778_0473422.jpg

ケナーの目の前では、シルが口を開いて輝く念波を集中させていた。
その波は次第に鋭くなって高音を発する。

「くそっ!!」
XXXは前進をかけるが、シルは翼を掴んだまま地面に突き立っているらしく、進めない。

【この一撃で終わらぬ事を祈ろうか】
シルの波動が周期を増して今にも放たれんとする。

ボールドは思い出した。

かつてハミングと戦った時も、こうして何も出来ずに敗れたのだ。
ケナーも守れずに。
そして後悔した。
もしかしたら、そこで成せなかったことが、ハミングさえ救う事となったかもしれないのに。

ボールドの心の震えを、ゾムエイルも感じ取った。
そして、自らを振り返った。
ホズピタスほどではないが、リムーを崇拝する代わりに、現代の人間を信用していなかった。
だがそれがいけなかったのだと。
今のボールドは、かつての私たちがリムーを守護したように、ケナーの代わりとなろうとも守ろうとしている。
ボールドは私と同じことを成そうとしている。

それからボールドはゾムエイルとの意識の合致を強く感じた。

しかし、放出された波動の波はすぐそこまで迫っていた。

第62話: XXX×X 前編_b0142778_048791.jpg

「”ライフ・イン・ダークウォーター”!!」
XXXの装甲の表面で、おびただしい数の鱗が波打った。
鱗に当たった光と音の波は、激しく反射してシルへと向かう。
逆向きの波動はシルを吹っ飛ばして、弾けた。

”これが・・・・・・私たちの調和か!”
暫くの沈黙の後、ゾムエイルが叫ぶ。
そして、自身の鱗が次々に剥がれていくのを覚えた。
”・・・・・・最初で、最後の”

「ゾムエイル、お前も、もう?」
ボールドの問いに、ゾムエイルは目を伏せた。

”そういう運命だったのだ リムーを守るのを使命としていたのだから
 その子孫の盾となって逝くのならば それ以上はない・・・・・・”

「・・・・・・ありがとうよ、ゾム・・・・・・」

”同志たち・・・・・・ボールドよ・・・・・・
 ケナーを、リムーの末裔を頼んだぞ・・・・・・ガフッ!?”
ゾムエイルが浮き袋を吐き出しそうになり、デデバリィが支えようとした時、彼女の姿は消えた。

”ゾムエイル、ガモゲドン・・・・・・俺たちに任せておけ”
デデバリィは改めて、自らの使命を理解した。


戦闘開始より三日目。

主操縦を短時間に交代し、サポート役は合い間に、
コクピットに準備された非常食を食べておく事で戦いを継続していた。

そしてマクタスが、メインパイロットとなってシルに直面していた。
第62話: XXX×X 前編_b0142778_0483994.jpg

「奴の弱点は何か・・・・・・今の所、波動や念動を使った攻撃しかしていない上、
 幸いにもXXXの激しい欠損は無い。最も、表面を脆くなるよう削っているとも考えられるが・・・・・・。
 手足や翼の先端から鋭い波動を発しているならば?そこを潰せば・・・・・・」
【16678ページ目】
マクタスとアリエールは、それぞれぶつぶつと言っている。
そして行動に移った。

「まずは!!」
シルの波動の刃をかわし、XXXは猛進する。
そして、拳をフェイントのように振った。
シルはそれを横っ飛びで避けるも、パンチはシルの腕の先端を掠めていた。

「良い具合だ!」
マクタスは何処か的外れな攻撃を仕掛け、
次第にシルは馬鹿にされているように感じ、波動で切り返す。
わずかだが荒っぽくなった念刃は、XXXに当たらなかった。

「残念だったな」
【マクタス・パールか】

シルはマクタスの意図に気づき、全身の先端を殴らせまいとする。
しかしそれをマクタスは想定していた。
シルが左翼の先端を避けさせた時、XXXの爪は、右翼の付け根を狙っていた。
関節を潰してしまえば、波動を発する方向も制限できる。

マクタスはほくそえんだ。
シルは次に、関節を庇って戦うはずだ。
事実そうだった。
シルは先端も関節も守るよう、波動を使って移動し拳を避けている。

だがマクタスの狙いはそこには無かった。
関節に気を使っているシルに対し、XXXの角は胴体へと向かっていた。
「ホーンさえ刺してしまえば!!」

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その時、強力な念波壁が生じて、アームホーンは止められた。

【刺してしまえば・・・何だというのだ】
シルを包むバリアが怪しく光る。

「アリエール君・・・・・・怪物になって隙も失ったか」
マクタスが聞こえるように言った。

【その答えを見せてやる】
シルが脚を開いて姿勢を変えた。
背中についた、幾つもの彩られた棘を突き出すように向ける。

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そして大小さまざまな念波の矢を乱射した。
その衝撃は強く、XXXを後ろに弾いていく。
マクタスは、脚部に付いたシュビツェの盾を振って、それを防ごうとした。
しかし上半身の守りは、拳でなんとか凌いでいくしかない。

「まだだ・・・・・・ここでシュビツェを失うのは・・・・・・」
守護者の消失は、出力も覚醒壁も弱まり、シルの波動への耐性も下がっていく事を意味していた。

そして四日目が訪れた。

「マクタスさん、私にやらせて下さい」
そう言ったのはケナーだった。
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”この日の為の我の戦いを!!”
XXXの眼が、ホズピタスの眼のごとく赤く輝く。

【三十二章に突入】
アリエールがそう呟いたのを、ケナーは聞き逃さなかった。

「最終章(フィナーレ)にしてあげるわ!!」
【出来るものか】
”・・・・・・可能な事だ!!”

XXXがギリギリと拳を軋ませ、シルへと向かう。
念波の矢の雨をものともせず、一直線に拳を放つ。
その一撃は確かにシルに当たったが、XXXに迫っていた念波は突然針路を変えた。
それらはシーグザールの町並みに迫っていた。

【これはどうかな】
「なんて奴!!」
住民は避難させたが、街を壊すのは出来るだけ抑えたいし、万が一の事も有り得る。
ケナーの意識は街の防衛へ向いた。
無数の波動槍が街を貫いて、XXXはいよいよ盾になろうと構えた。

第62話: XXX×X 前編_b0142778_051061.jpg

放たれた光の前に、XXXが立ちはだかる。
ホーンである部分では槍を弾けるが、無防備な部分はダメージを被った。
何度も防衛が続いた後、突然、強力な波動が右肩コクピットを掠めて、背後の建造物を破壊した。

【どちらを守るつもりかな】
ケナーは焦った。今のに当たっていたらメアリーは・・・・・・。
勝利の為には街を犠牲にしなければならない。
全員が逃げた事を信じなければならない・・・・・・。

第62話: XXX×X 前編_b0142778_0512752.jpg

やがてシルは、全身の先端から波動を集め、二つの巨大な刃を作り出していた。
ケナーはその刃が、XXXと街の両方に向けて投げられるだろうと察した。

【もう一度問おうか】
巨大なギロチンが迫ってきていた。
”ケナー!我らの力を見せる時だ!!”
ホズピタスの声が響く。
「私たちの力!?」
ケナーは戸惑ったが、悩んでも求める答えは一つしかないのは解っていた。

二つの念刃、そのどちらも破壊する!!


第62話: XXX×X 前編_b0142778_0535129.jpg

「テンポ・ド・モーテ!!」
かつて、ゴネドの末裔を葬った死の波動が、波動のギロチンを打ち消し砕いた。
ホズピタスの角は波動を纏い、死の鼓動を脈打ったまま、シルへと向かう。

だがそれはマクタス同様、念動の壁によって受け止められ、弾かれる。

先ほどと違うのは、シルの発していた太陽のような光が、急激に弱まった事である。

第62話: XXX×X 前編_b0142778_0543646.jpg

長期戦は遂に五日目に突入した。
いよいよXXXの体は軋みを上げ始めていたが、休む事は出来ない。

「・・・・・・とうとう私の出番が来たようね」
第62話: XXX×X 前編_b0142778_0554162.jpg

メアリーの一言とともに、XXXの翼が開き、その中心となる意思がベドニーゼのものとなった。
”クケェーッ!!アリエールの奴はもうボロボロ、畳みかけようメアリー姐さん!”
「全く賛成だわベドニーゼ。
 みなさん、少し荒っぽい運転になりますけど、ごめんなさい」
メアリー主操縦のXXXは、不慣れな分野性的というか恐ろしい動きを見せた。
体重全てをかけたようなラリアットが、機体を傾けながら放たれる。

【!!】
その動きを見て横転すると思っていたアリエールに、全力のラリアットが直撃した。
シルは引っくり返って、道路を削って投げ出された。

”姐さんその調子!”
「みなさん、私の操作通りにしないで、サポート補正かけまくってくださいよ」
「いや、これは今までで一番有効かもしれん」
マクタス他は口々にそう言うだけだった。

「これでいい?操縦って思ったより繊細なものじゃないのね・・・・・・
 みなさん!アムヘ酔いに注意して、しっかり掴まっててください!」
XXXは両腕を振り回しながらシルに襲い掛かった。
乗組員たちは振動に見舞われたが、それだけ激しい攻撃を食らわせているのだ。

「ま、間違えた!!」
そんな事を言いながら操縦されるXXXに、ぼこぼこにされるシル。
しかし以前のような迅速な反撃もせず、トマス達はようやく敵の消耗を感じていた。

「これで決めるわよ!!」
天に角を突き出すXXX。
しかしメアリーの手が滑って、頭と左腕を同時に下げてしまった。

「ん?オレか!」
従って左ストレートを操作するブレジン。

第62話: XXX×X 前編_b0142778_0562264.jpg

【!?】
その一撃はシルの顔面を直撃し、すさまじい衝撃を与えた。
そして、シルは首元から、形容しがたい色の液体を噴出しながら、倒れた。

「やった!?」
突然の事に一同は驚く。

”クッケェーーーーッ!!!!
 アッリエェェェェルゥ、ボクと姐さんに負けるってことは、オマエは自分の言うほど大層な奴じゃあなかったってことだねェェ、
 しょせんはァァ、コアの力がなけりゃあボクに匹敵するどうしようもないヤツだったということさァァァァ!!!!”

「ベドニーゼ、あなたは喋ってるだけでもムカつくのに」
挑発を聞いてメアリーは呆れ気味に言った。

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それを聞いて聞かずか、倒れていたシルは、実にゆっくり、むっくりと立ち上がった。

黙ったまま、静かにそうしていた。

「気をつけろ、まだ何かあるぜ」

シルは再び光を帯び始めていた。

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体の形を変え、初めにトマスたちの前に現れた時の姿に戻っていく。
そしてシルは、光を取り戻した。

【本当はあの姿のまま破滅を迎えさせたかったが 仕方無い】
【キミたちにはボクの計画を壊すだけの力があったということだ】
【心から褒めたいよ 本当にね】

負っていた傷も無くなっていた。

「まさか・・・・・・ようやく兆しが見えてきたと思ったのに・・・・・・」
ボールドが思わず呟いた。

「あんだけ戦ったのにこれかよ・・・・・・ガモゲドン・・・・・・」
ブレジンに怒りと妙な脱力感が生まれた。

【お楽しみはこれからなんだろう?】

「みなさん落ち着いて、またタコ殴りにすればいいことよ!!」
メアリーが叫んで、XXXの腕が槌となって振り下ろされる。
シルは波動を纏った手先を差し出し、それを止めた。

「何!?」
【茶番だよ】
XXXの腕が弾きかえって、機体が旋回した。

「これが本気って訳?」
メアリーが怒り気味に言って、両腕を振り下ろす。

【どうかな】
シルは迫る拳を、上から押さえ込んで地に叩き付ける。
姿勢の下がったXXXの顔の横に、手を突き出して波動を放ち、横転させる。

「なんなのよーっ!?」

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シルはそのまま念波の剣を、XXXに突き刺した。
やがてその刃を消すと、見下ろしながらたたずんでいる。

【まだ戦えるといいな】
シルがそう言って待っていると、やがてXXXは拳を地に叩きつけて立ち上がった。

”・・・・・・姐さん、ちょっとォ”
語りかけるベドニーゼ。
「・・・・・・分かったわ、やりましょう、あなたの必殺技を」
メアリーがシルを見据えて睨みつけた。

【キミにも出来るのか?】

「やるわよ!”ゲヘナークレヴァス”!!」

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XXXが黄色い光を放ち、機体の振動が空気を震わせる。
先ほどシルに負わせた傷が、怪しく輝く亀裂となって、深く広がっていく。

しかし、シルの頭頂部に付いたアリエールの顔は、笑っていた。
XXXの顔に向かって手をかざし、波動を収束させる。

”クケッ!?”
ベドニーゼの嘴にひびが入って、それが全身に広がった。

【気を抜いたなベドニーゼ】

”げげげゲゲゲゲッッッ!?”
ベドニーゼの像に走る亀裂が次第に細分化していく。

「ベドニーゼ、しっかり!」
メアリーの声も虚しく、鳥の姿は脆く崩れゆく。

”ケケッ・・・・・・ボクは裏切者で、裏切者としてもダメなヤツでェ
 誰がホントの恩人かも理解せず・・・・・・誰の役にも立たず・・・・・・
 だけどメアリー姐さん・・・・・・アナタのおかげで、裏切者のまま死なずに、済んで”
言いかけて、ベドニーゼは粉々になった。

「あなたは確かにダメなヤツだった・・・・・・
 だけど、小鳥にでもなって帰ってきたら、飼ってあげるから」
波動が放たれ、XXXの顔に真正面から当たり、倒れた。

もう六日が経とうとしていた。

メインパイロットは一巡し、トマスに戻ってきていた。
第62話: XXX×X 前編_b0142778_105918.jpg


【ボーリー これでいいのか】
【よく粘ったとは思うが 仲間を道連れに死ぬのだ】
【キミはそれを望まないと思っていたが】
【理由があるのだな そういえば左腕を折った覚えがあるな】

「喋るなよアリエール。僕らもまだ手を尽くした訳じゃない」

”この時を待っていた!!”
「いくぞ、デデバリィ!!」


後編へ続く

by kozenicle | 2012-09-05 01:10 | ストーリー:デデバリィ

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