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わたっちさん・・・
人は、別れを乗り越えらなければ(ry





「あの馬鹿!」

カッツオ・ニールファットは頭を抱えた。
自分を恨んでいるはずの息子が、自分を救う為に戦っている。
それはブレジンが、自分の同僚を裏切った事とほぼ同義であった。

しかし、その裏切りはカッツオの思い描いていた「ニールファットの裏切り」とは少し違っていた。
ニールファットの先祖達は、貴族ではなかったが、社会的な地位の高い者を多く輩出していた。
その出世の裏にあるのが、裏切りであり、大衆からに見て汚い手を使うことだった。
つまりニールファット家は元々、卑怯なことに対しては頭の切れる血統だったのである。

カッツオは、いずれブレジンにもその訳が分かるだろうと思っていたが、これでは当分無理そうである。
息子は全くの逆方向に裏切ってしまった!

第57話: ドッグファイト_b0142778_241367.jpg

ガジリドールは苛立ちからか、猛烈な勢いでたたみかけた。
応戦するヴィムのレーザーレザーが、腕の側面に付いたハンドブレードと交差した。
白煙と共にブレードが飛ばされた直後、アームホーンの牙が靄の中から突き出された。
トマスはそれをとっさにホーンで弾き返し、間合いが再び広がった。

「所長とマクタスさんの次は、先輩か・・・こんなことばっかりだ、アリエール!」

振りかぶったヴィムに迫ったのは、ワイヤー付きで射出された先ほどの牙だった。
ヴィムはそれを膝で無理矢理弾くが、ブレジンは次の手を打っていた。

「ワールズ・コライド!!」

ガジリドールの調和が発動し、ヴィムの脇から、土で出来た二匹の暴君竜が迫る。
恐竜がヴィムに激突し砕けた時、間髪入れずにコルダックガトリングが連射された。
怯んだトマスはそれを無防備で受け止めることになった。
白い機体は倒れこんだが、ブレジンはそれ以上追撃できなかった。

”だめだ・・・ジレブン・・・”

「ガモゲドン・・・・・・そうだよな、お前はオレじゃなくリムーの味方。
 オレのわがままに付き合うことはねえ。
 だけど。どうすればいいかわからねえ。今はトマスと戦いてえ。
 何故かはわからねえ。親父のためなんかじゃねえ・・・・・・」


その様子を見て、アリエールは大層満足げであった。
「おーい、手加減して時間を長引かせるつもりなら、どちらの人質も危ないぞ?」


その人質の一人メアリーは、もう一人カッツオがひたすら呆れている様子を見て、苛立った。

「ブレジンはあなたの為に戦ってるのよ!どうしてそんなに冷たくなれるの?」
「自分の心配をしたらどうだ!仮にブレジンが勝ったら、貴様は死ぬかもしれんのだぞ?」
「そうだとしてもよ、最期に見るのがどうしようもない親子だなんて、嫌なもんよ!」
「だがな、私には、あいつの神経が、全く分からんのだ」


二人があれこれ言っている間、ケナーとルチネ、新デデラボチームと旧所長ゼニは交戦を続けていた。


「聞こえるか、アイコール工場長!」
その声はゼニ・ガッポのものだった。

「通信しても平気なんですかい?所長!」

「今ならアリエールに聞かれる心配も無い。
 奴は以前に比べかなり油断している。
 アームコアさえ活かせなければ、所詮はただの小僧ということだ」
コゼニスは端から見ると必死に攻撃しているようだが、その中身は全くもって落ち着いていた。

「しかし・・・」

「今捕まっている、カッツオからの垂れ込みで、私の家族は此処には幽閉されていない事が分かった。
 それに今現在、奴が手駒として動かせる者は、UETのルチネだけのはず。パプの連中は奴が追い払った。
 無防備な奴が、別所の人質をいつでも手にかける術を用意しているとは、考えにくい」

「半分はハッタリにすぎんと?」
工場長はボゾガレーを旋回させ、コゼニスを突き飛ばしながら答える。

「そのはず。隙を見て人質の安全を確保したら、私がアリエールを仕留める」
所長と工場長は通信を切って、再び戦闘ごっこに集中した。

一方でトマスとブレジンの戦いは熾烈を極めていた。
第57話: ドッグファイト_b0142778_2412330.jpg

ヴィムはデデバリィの調和・ターコイズであらゆる能力を上昇させて、ガジリドールを翻弄する。
しかしブレジンも調和で意表を突く事で窮地を打破していた。

「なんだかすまねえなトマス!」
「最初の頃を思い出しますね!!」

斬りあい削りあいは尚も続いた。
いよいよガジリドールの牙が、ヴィムの腕を貫く。
しかし骨には至らず。振りほどいて光刀一閃。
ガジリドールの触覚が飛ぶ。
鋭い爪がヴィムの顔面を裂いた。
土人形が飛び交って光弾を潰していく。
隙を見てトマスが角の打突。
ホーンがかちあってブレジンは転げた。


「・・・・・・一体、私が何をしたというのだ?」
つぶやいたのはカッツオであった。

「ブレジンはあなたを苦しめたかったはずなのに、あなたのために苦しんでるんだわ」
メアリーは自分を待ち受けるものを忘れる為に、お喋りに興じていた。

「・・・・・・馬鹿なやつだ」

「本当にそう思う?」



「・・・・・・長い・・・・・・時間切れだ!」
アリエールはそう叫んで立ち上がった。

「なにっ!?」
「ちっくそ・・・」
ヴィムとガジリドールの動きが止まる。

しかし、次に動いたのはアリエールではなかった。


「動くなよアリエール!!」
拳銃を持ったカッツオは、その銃口を屋根の上に向けていた。

「え!?」
メアリーは目前で起こった逆転劇に驚いた。


「ハハーッ!この私がおとなしく人質になるとでも?いやいやそこは卑怯のニールファット!
 貴様が余裕ぶっこいている間、こういう小細工を堂々とコソコソしてのけるのがお家芸よ!
 アリエール、神にでもなるんならそれでもいいかもしれんが、もっと狭い視野を持って細かい所までも見通すべきだな!
 でなけりゃシロアリに内部から食われても気づかない柱のようになるぜ!」
カッツオのテンションは最高潮であった。

「銃のパーツを隠し持っていたか」
アリエールは静かに呟いた。

「親父ぃ・・・・・・」


「手を上げて、5、数える内に降りてきな。
 ・・・5、4・・・・・・」
カッツオがカウントし始めると、アリエールは一歩ずつ降りはじめた。
しかし手を上げてはいない。

「手を上げろと」

「どうしてボクがキミたちをバルコニーに閉め出したと思う?
 逃げづらいから?目立つから?見栄えがいいから?
 それもある」

銃声が轟く。

アリエールの、肩口に弾丸が埋もれた。

それは、カッツオのいた床が抜けたからだ。

反動もあり、撃った瞬間からカッツオはバルコニーから転落していた。

そしてすぐに十数メートル下の地上に叩きつけられた。


「親父ーーーーー!!!」


「シロアリに内部から食われたような小細工に気づかなかったのは、お前の方だったな、カッツオ。
 この工場棟はもはやボクには必要ない。よって、スイッチ一つで壊れるように細工してあるのさ。
 確かに余裕だすべて余裕の範囲だよ。ついでにメアリー・トゥース、キミも落ちたまえ」

爆破音と共に、メアリーの周囲にある、赤錆びた床が一枚ずつ剥がれていく。

「いやああああ!!」
メアリーは飛び上がって、室内入り口へのドアノブを掴み、僅かに残された段差に足をかけた。

「無駄だよ。工場棟全部がコントのように崩れるんだ」


ブレジンはすぐさまガジリドールから飛び出して、カッツオに向かった。

「親父!しっかりしろ!!」

「馬鹿なやつ・・・・・・私に情をかける余裕などないだろ」

「情なんかかけちゃいねえ、ただ・・・・・・」
ブレジンは横たわる親父の背に手を回し起こそうとした。

「馬鹿め・・・・・・情けがいつも、貴様を駄目にしていたのだ、ブレジン」
ブルーグローブはレッドグローブになっていた。

「くそおやじ、大して会ってもいねえのに、分かったようにいうんじゃねえ・・・・・・」

「だが・・・・・・図星なのだろう?・・・・・・貴様が駄目になったのと同じ、私も情けをかけたばかりに・・・・・・
 いままでも、ニールファットは、悪行に手を染め裏切りどんなに逃げたとて、情けによって破滅してきた・・・・・・
 情けは、敵だ・・・・・・非情になれ、ブレジン」

「・・・・・・うるせえよ・・・・・・血筋だと?そればっかりだぜ、くそおやじ・・・
 そんな昔のことで、オレを縛るんじゃねえ・・・・・・トマスたち、リムーのように・・・変わる時が来るんだよ・・・
 変える為に今があんだよ・・・だからオレは昔の、誰にもならねえ、情けをかけてもいい、かませ犬でもいい、
 新しい、ニールファットになるんだよ・・・・・・」

「馬鹿・・・・・・だが、それで、いいだろう・・・・・・
 情けをかけつづけて、後悔する人生を歩みたいのならば、お前はもう新しい。
 しかし・・・・・・情けをかけるならば・・・・・・私ではなく・・・仲間にかけるべきだ・・・・・・」

「親父・・・・・・キレイごと言いやがって・・・・・・死ぬ気じゃねぇだろうな?」

「止める、理、あるのか・・・・・・そ・・・ひ・・・・・・いだな・・・
 ・・・む、息子よ・・・・・・生きろ!ムシケラのように・・・・・・!!」


そしてカッツオは意地悪げな笑みを浮かべた。

最期までクソ親父であり続けた”一番ダシ”はバカ息子の腕の中で事切れたのであった。



「メアリーさん!!」
トマスのヴィムは、崩壊寸前のバルコニー目掛けて突き進む。

「ルチネ、奴を止めろ!」
「あいあいさっ!!」

ヴィムとメアリーの間にジャゴゲルバの巨体が突っ込んだ。
工場棟に衝突し、壁が砕けてメアリーが吸い込まれた。

「何をやってるルチネ!ふざけているのか?」
「フハハハハ、邪魔されたんだ」
ジャゴゲルバのボディには爪痕が付けられていた。


「トマス、オレが戦う!」
ブレジンのガジリドールが、トマスに背を向けながら立った。

「先輩!」

「・・・・・・親父にはああいったが、アリエールに情けをかける必要なんてねえ・・・・・・
 工場棟が崩れる前にヴィムで突入してメアリーを!助け終わったら待機だ!
 いいか、オレの悲鳴を聞いたら飛びたて!」

ブレジンはそう言い残し、ルチネへ向けて飛びかかった。
「・・・・・・げえーっ!」



アリエールは肩を押さえ、工場棟を崩しつつ屋根を降りていた。
反対のバルコニーに落ちた時、激しい衝撃が起こり、それよりも下へ落ちそうになった。

「ボーリーか?何を馬鹿な真似を・・・・・・」

ヴィムは工場棟の入り口をホーンで破壊して侵入した。
厚いトタン屋根の一部が既に剥がれ落ちてきている。
早くメアリーを見つけなければならないが、
広かったはずの空間は、長い間整備していなかった為に散らかっており、
落ちてきた瓦礫の山も重なって、すぐに見つける事は不可能であった。


第57話: ドッグファイト_b0142778_2414437.jpg

「フハハハハハハハ」
ジャゴゲルバは容赦なく熱の塊を放ち、ガジリドールを襲った。

「お前はなんでアリエールの味方してんだよ!」
ブレジンは邪魔そうに言ってプラズマを回避、ジャゴゲルバに噛みついた。


「アリエールめ、何処へ行った?」
コゼニスとボゾガレー改は戦闘を止め、いよいよアリエール討伐に向かう。
しかし工場棟の崩壊に紛れて姿を消していた。

「奴も自分の置かれている状況にやっと気がついたか」

「しかし所長、残りの人質の居場所を聞き出さなくていいんですかい?」

「そうだな、奴が逃げるとしたらまずそこへ向かうだろう・・・・・・車だ!!」

二機はデデラボ本棟へと急いだ。


「ハハハ、なぜ?俺も、あまり顔をあわせていないUETの二期メンバーの為に、言うことを聞いてるのだ。
 それにきっかけはプレーンビスケッツを追い出されたからだ、別にアリエールに味方してるわけじゃないぞ」

「いい仕事があるぜ!オレのかませ犬だ!!」

ガジリドールはジャゴゲルバの顔面に牙をぶち当てると、引っくり返ったどてっ腹に爪を立てた。

「フハハハ、かませ犬はお前だろう」
ジャゴゲルバは砲塔を振り回してブレジンを殴りつける。
ひるんだところにプラズマ砲を浴びせた。

顔面獣にエネルギーの塊が直撃し、動かなくなった。

「これで終わってしまうか。さすがに笑えんな」
ルチネはぽつと呟いた。

第57話: ドッグファイト_b0142778_2415762.jpg

「おいおい笑うんなら笑い通してくれよな!こっちまでしんみりしちゃうぜ!」
ガジリドールは深手を負っていたが、動力を失ってはいなかった。

「そうだよオレの味方は運だけだ・・・・・・それより心強い味方は存在しないがなぁ!!」
大口を開いて飛びかかり、ジャゴゲルバの大砲を引き抜かんとする。

「フハハハハ!なんだか安心したぞ!」
ルチネはそう言いながらも決して攻撃の手を緩めなかった。
ジャゴゲルバは杭のような前足を振り下ろし、ガジリドールに叩き落とす。
しかし噛みついた顎は離れず、バイブネイルの反撃で前足を弾き飛ばした。


いよいよ倒れるかという工場棟の中、トマスは未だにメアリーの姿を探していた。

「もう限界だ、崩れる!」

”ここだ、リムー!!”
耳障りな声。

”ベドニーゼ!?”
ヴィムが―デデバリィがとっさに弾き飛ばした瓦礫の下には、ベドニーゼのコアを抱えたメアリーの姿があった。

「早く乗って!」
トマスが言うより早く、メアリーは瓦礫を飛び越えヴィムのコクピットに滑り込んだ。

「ベドニーゼが導いてくれたのよ!」
”ボクはアリエールが言うほどバカじゃないんだよ”
ヴィムがベドニーゼのコアを三本指で掴んで立ち上がる。

「あ」
アームホーンが工場棟の天井を貫いた時、僅かに原型を留めていた建物は完全に倒壊した。


工場棟の崩壊によって生じた凄まじい砂煙は、ガジリドールとジャゴゲルバを飲み込んでいった。

第57話: ドッグファイト_b0142778_2421754.jpg

隙を突き牙から逃れたジャゴゲルバは一時退避し、空中で向き直る。

「フハハハ、さすがに今度は」

「二度あることは三度あるっつーの!」
ブレジンは、煙が晴れる前から既に土瓶アームヘッドを見上げていた。

「ハハ、いや、今度こそ止めだ」
ジャゴゲルバの砲塔がガジリドールを直線上に捕らえた。
そしてプラズマが収束し赤く輝く。

「ちぃ・・・・・・!」
ブレジンにはもう対空攻撃の手段が無い為、
ジャゴゲルバに向け、バルカン砲の弾の雨を浴びせた。

しかし、アームヘッドの覚醒壁に対してはあまりにも無力な攻撃であった。

「・・・こんなことがあって自棄になるのも、俺にはわからんでもない!
 しかしだな、アムヘを機銃で撃つのは、アマチュアダックスフンドのやることだ!!」

あまりにもしつこくバルカンを撃ち続けるので、ルチネが口走った。

プラズマの収束が大きくなっても、ブレジンは撃ち続けた。


「オレたちのハーモニーを聞き漏らすなよ!!」
弾切れと同時に、ガジリドールが跳躍、プラズマ砲の範囲から逃れようとする。
ジャゴゲルバは旋回し再びブレジンを捕らえた。

「ワールズ・コライド!!」
再び発動する調和。

しかし直後、プラズマの柱が放たれ、地面を抉る。

ルチネは、勝利を確信したというより、これ以上続く事はあり得ないと思った。

まだ気づかない。

「知ってるか?かませ犬にも穴は掘れるんだぜ?」
ガジリドールは、焦がされた場所からずれた地点で、地中から飛び出した。
調和で土を操作し、瞬時に潜ったのだ。

それだけでは終わらなかった。

ジャゴゲルバの周りに散った、弾丸が一点に集まっていく。
銃弾の塊はいつしか巨大なゴミムシに変貌し、ジャゴゲルバの体を登っていった。

「ハッハ、なんだ?」
ルチネはコクピットの位置のせいで気づかない。

ジャゴゲルバが次の攻撃に移ろうとした時、ルチネの目の前には大ゴミムシの尻が突きつけられていた。
「これは笑えない」
灼熱のガスが噴射される。
それは弾丸に残った火薬粉と爆発で擬似的に再現されたものだったが、
とりあえずジャゴゲルバのコクピットは煤けて溶けて割れた。

「聞き漏らすなっていったじゃーん」

第57話: ドッグファイト_b0142778_2423622.jpg

その時瓦礫から飛び出した光刀がジャゴゲルバを斬った。
トマスはひたすら隙を待ち続けていたのだ。

第57話: ドッグファイト_b0142778_2425089.jpg

ヴィムの着地と同時に、プラズマ砲が地に落ちる。
ジャゴゲルバは唯一にして最強の武器を失ったのだ。

「同僚においしいとこ持ってかせるのが、これからのオレの仕事なのよ」
ブレジンが言い、墜落するジャゴゲルバに向かっていく。

「行きますよ先輩!」
トマスも飛び上がった。

「ハハハッハ、いったいなにがおこるのだ?」
ルチネは暗黒のコクピットの中で笑った。

「行くぜ!!」
ガジリドールが、土で自らの分身を作り出した。
二匹のガジリドールは、ジャゴゲルバの足を二本ずつ掴み、動けぬよう固定する。
そこへ両手からレーザーレザーを発するヴィムが突っ込み、空中で前転、
ルチネの頭上を通り過ぎ、地に降りた時、ジャゴゲルバの四肢が削がれた。
ただのでかいコクピットと化した物体は地を転げた。

「これがオレたちの、ダブルツインタッグコンビネーションセカンド2!!」

「ふぃーちゃりんぐ・地獄のかませケルベロス」

「トマスさんなにいってるんですか」



ゼニとアイコールが本棟に辿り着いた時には、アリエールの姿は既に無く、
ジープの轍だけが残されていた。

「奴は肩を撃たれている。そう遠くはいけないはずだ」

「しかし所長、奴の行き先は一体?」


「それはコイツが話す」
そういって二機の前に現れたのは、ブレジンとトマスらであった。
彼らは運んできたジャゴゲルバの残骸を落とした。

「フハハハハハ、ようやっと開放された」
飛び出たルチネに、ガジリドールはずいと顔を近づけた。

「アリエールの野郎は何処へ行きやがった?」
するとまたルチネが笑った。

「ハハハ、U.E.T跡地がもう一つのアジトだ。残りの人質もそこにいる。
 俺も連れていけよ。ガイドさんが必要だろフハハハハハ」

次にはケナー機のヴァムが、ジャゴゲルバの大砲角を運んできた。
「U.E.Tの場所なら私にも分かるけど、彼ルチネは、ゾムエイルの調和者なのよ」

「連れて行く他ないですね、すぐにでも向かいましょう!」
トマスが言う。

「ちょっと待ってくれ。ブレジン君を待とう・・・・・・」


ゼニの言う通りに、彼らはカッツオ・ニールファットの、ごく簡易的な葬式を行う事となった。

カッツオの亡骸は、ブレジンの手によって、湖に浮かべられた。

「じゃあな親父・・・・・・立派な藻屑になれよ・・・・・・」


ブレジンは過去への羨望に背を向け、
同僚達の待つ、あるいは、遂に揃った六体のリムーの守護者の許へ、
そして、リムーの祖を持ち、待ち構えるアリエールへと向かい、歩き出した。



by kozenicle | 2012-04-04 02:45 | ストーリー:デデバリィ

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